クモさん大ピンチ物語
※この物語はフィクションです。実際のスーパーや人物やクモとはまったく関係がありません。
あるスーパーの衣料品売り場に、クモさんが住んでいました。
脚までの体長5センチの家グモで、ゴキブリを食べてくれるクモで、ゴキブリがいなくなるといつの間にか姿を消すというとてもお利口なクモさんなので益虫といわれています。
ある日のことです。
「少し寒い季節になってきたけど、衣料品売り場はいつでも外より暖かいから助かるな。ふわふわしたいい寝床もたくさんあるし」
と、うとうとお昼寝をしている時に、大ピンチが生じました。
急に寝床が大きく揺れたかと思うと、寝床ごと誰かに持たれてしまったのです。実はその日の寝床は、ジョギング用ジャージのズボンの中だったのです。
「これなんかいいかな?」
「いいんじゃない、あなた?」
「じゃあこれにしよか」
クモさん大ピンチです。
「さあ困ったことになったぞ、お客さんに見つかったら今度こそつぶされてしまうに違いない」。
「この前も向こうの在庫置き場でお散歩していたら、女性従業員がいて、キャーキャー言われて(^-^;、
「そのあと男性従業員が2人がかりでおいらを処分しようと探し回っていたからな。あの時はなんとか逃げ切れたけど」。
「いつこのズボンから逃げればいいかなあ・・・。今逃げたら見つかっちゃうし。いつもお世話になっているいごごちのいい売り場だから、クモがいる、と悪い風評を立てて迷惑かけたくないし(~o~)」。
そうこう考えているうちに、レジ前に来てしまいました。
レジ前でもう一度お客さんは商品を裏表して、これで本当にいいか、吟味しています。
「これ上下どちらもLだったっけ?」
「えぇ、たしかLだったはずよ」
クモさんはじっとしています。
レジは背の高い男性従業員でした。従業員も商品を裏表して、
「えーと、はい、どちらもLでございます」。
クモさんはまだじっとしています。
「じゃ、それで」
「かしこまりました」
ピッピッ
「2点で◯◯◯◯円でございます」
「カードで」
「はい、カードお預かりいたします」。
この間も、クモさんは見つからないようにズボンの中でじっとしているのでした。
「まずい、このままだと、袋の中に一緒に、詰められてお客さんの家まで行ってしまうハメになるぞ、どうしよう(~_~;)」
ピッ
「お支払い方法は?」
「一回で」
「一回ですね」
カチャ
スー(レシートが出てくる音)
「カードとレシートでございます、少々お待ちくださいませ~(^.^)」
従業員はズボンを畳もうと、レジのこちら側で、すそを下向きにして、まず、二つ折りにしてひょいと上に持ち上げました。
「今だ!!」
クモさんはその時に最後のチャンスとばかりに急いですそから出て、ポテッと床に落ちました。ちょうどレジのカウンターの従業員側だったのでお客さんは全く気付いていません。
従業員は気付いて、
「(あっ、でっかいクモだ( ゚Д゚))
「(なんだ、家グモか。まあいいか。セアカゴケグモでもタランチュラでもないし)」
「(お客様も全く気付いてないし、このままシレッと袋に入れて渡しちゃお(^▽^))」
と、何くわぬ顔で商品を畳んで袋に入れてお客さんに渡しました。
そのすきに、クモさんは人間からは見えないところにささっと逃げてなんとか助かりましたとさ。
めでたし めでたし?
END